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マーク ケルトン

国家秘密本部(NCS)の元防諜担当副⻑官。30年以上にわたりCIAの要職を歴任。4度の⽀局⻑(COS)経験でキャリアの⼤半を敵対的な環境下で勤務。CIAや国家情報⻑官(DNI)などから数多くの殊勲・栄誉賞を受賞。

CIA元副長官が語る世界最強スパイ機関CIAから学んだ哲学②

CIA元副長官が語る世界最強スパイ機関CIAから学んだ哲学②

情報機関での長いキャリアを通じて、私は「敵対勢力は待ってはくれない」ということを痛感してきた。 彼らは、私たちが予想するよりも早く、時にはこちらの準備が整う前に、適応し、投資し、新興技術を活用する。 これからのグローバル・インテリジェンスにおける大きな競争は、もはや影の中だけで戦われるものではない。未来のツールを開発している研究所、スタートアップ、そして企業の役員室で形作られていく。次の5つの技術は、すでに情報活動の遂行方法を変えつつあり、将来の戦略的優位を決定づけるものとなる。 人工知能(AI):パターン認識から脅威の予測モデルまで、AIは収集と分析の双方を変革している。しかし同時に、敵対勢力が身元を偽装し、偽情報を自動生成し、影響力工作をかつてない規模で展開することも可能にしている。 量子技術:私たちはパラダイム転換の瀬戸際にいる。量子コンピューティングは暗号を根底から覆す可能性を持ち、量子センシングは新たな監視手段を生み出すかもしれない。これを最初に制した者がルールを作る。 自律システム:ドローン、無人潜水機、宇宙配備型センサーは情報収集の方法を変えつつあり、人員のリスクを減らしながら到達範囲を拡大している。自律性とは単に機械のことではない。速度、規模、そして意思決定の優位性の問題である。 デジタル・アイデンティティと生体認証技術:情報活動は信頼(自分の側の信頼と相手側の信頼)に依存している。アイデンティティ、認証、プライバシーをめぐる攻防は、いまや防諜の最前線となっている。 次世代通信(5G以降):高速で安全かつ低遅延の通信は現代の作戦に不可欠だが、同じネットワークを使うと悪用される可能性もある。将来の指揮統制は、誰がインフラを構築し支配するかに左右されるかもしれない。 私たちは機密空間や従来型の調達モデルの枠を超えて考える必要がある。インテリジェンスの未来は、技術者、起業家、そして使命志向のイノベーターとの連携によって築かれている。だからこそ私は、最先端の能力と国家安全保障任務を結びつける活動に深く関わり続けている。 私たちには立ち止まっている余裕はない。 これらの技術のうち、インテリジェンス任務、あるいはあなたが身を置いている自身の業界にとって最も破壊的になるのはどれだと思うだろうか。

CIA元副長官が語る世界最強スパイ機関CIAから学んだ哲学①

CIA元副長官が語る世界最強スパイ機関CIAから学んだ哲学①

私はCIAに34年間在籍した。それゆえに、CIAで物事がどのように機能しているか、かなりよく理解しているつもりだ。そこで、これから何度かに分けて、CIAの「哲学」について話をしたい。 例えばビジネスの目標は何か? 利益、お金、その他すべてだろう。CIAではそれが「任務」に置き換わる。 つまり、人々は任務に献身しているのだ。それがすべての原動力である。任務は、米国という国を支援するための情報収集、あるいは米国を支援するための他の情報活動を行うことだ。 CIAで成功するには、「長時間労働」と「犠牲」が必要だ。 CIAは仕事ではなく、生き方である。一度CIAに入ると、任務が最優先で、それが人生のすべてになる。24時間体制で動き、特に作戦分野の世界は非常に閉鎖的な世界である。 それは良い面も悪い面もある。入局すると、友人たちは皆CIA内部の友人になる。なぜなら、自分は秘密の世界にいるからだ。その世界の外の人々と接することも普通ではなくなる。家族のことやその他のことなど、話せることと話せないことがある。そしてCIAの職員は24時間体制で働くことを期待されているだけでなく、自ら喜んでそうする。任務を愛するようになるのだ。 私も、家から仕事に行くのに玄関ドアを開けたくないと思った日は一日もなかった。だから、とても中毒性があると言える。ただその中毒性はメリットだと言える。逆にデメリットを聞かれれば、ビジネスの世界でよく話題になるワークライフバランスが、状況次第になってしまう、ということだ。とにかく、通常の勤務時間とは異なる。 私が思い出せる限りで言えば、プライベートな生活と仕事の生活が均等に満たされていた日は一日もなかった。何年もの間、仕事に専念しなければならなかったために、誕生日や記念日などを何度逃したか思い出せない。それは出張に出ていることがあるだけでなく、仕事が常に24時間体制だからだ。 子どもと野球の試合に行きたいと思っても、「この任務には君が必要だ」と言われれば、仕事に行く。どんな予定があったとしても、仕事を優先する。 これは、ビジネスとそれほど違いはないのではないだろうか。コツは、できる限り個人的な時間も取ることを忘れないことだ。さもなければ、後々になって個人的に代償を払うことになる。ビジネスでもそうだが、常に働き詰めで、他のことには一切時間を使わない人たちがいる。人は、自分の人生を生きなければならないので、バランスを取るべきだと今は考えている。 長期的には、他のことにも時間を割くほうが健康的だと思う。心と体を休ませる必要があるが、常にコミットしている世界から一歩踏み出すことは、精神にとって良いことだ。 CIAの職員たちは、2001年にニューヨークで発生した911同時多発テロ以降、すべてを出し切ったと言える。CIAの関係者は、何年も休暇も何もなく過ごした。国際テロ組織アルカイダの最高指導者だったウサマ・ビンラディンを追跡した人々は、何年も献身した。職員に大きな負担をかけたことは言うまでもない。肉体的に疲労困憊し、精神的に疲弊し、感情的に消耗する。海外への出張や、戦争地域への移動などは、非常に厳しいものだ。 それを乗り切るためには、ある程度のタフさが必要だ。CIAで成功したいなら、一生懸命、長時間、懸命に働く必要がある。そして、それ以外に方法はない。ずるをしたり、手を抜いたりすることはできない。なぜなら、人々の命がかかっているからだ。 CIAで、素晴らしい人々と共に奉仕し、任務として国に奉仕する機会を得たことは、大きな光栄であり特権であった。 仕事では何度も失敗をした。何度も失敗を経験した。失敗からは最高の教訓を学ぶことができる。ただそのためには、失敗が大きすぎてはいけないが、失敗を許容できる上司が必要である。しかし、失敗から学ぶことは大きい。私がCIAでリーダーを務めていたときは、もしすべてがうまく運んだら、逆に、何かが間違っているのではないかと考えていた。つまり、失敗のような、何らかの「出来事」は必ず起こるということだ。だが、失敗には適応できなければならない。適応できる唯一の方法は、頭の中で物事を予行演習し、訓練し、準備をし、状況に適応することだ。そして、それには経験が必要だ。そして最高の経験とは、失敗をすることだ。 ただ失敗しないようにすべてのシナリオを考える。例えば外国の役人と会うとしよう。国のために働いているような人だ。その人と会って、テロ対策について話す。その会議で何が起こる可能性があるか? 私の目標は何か? 彼の目標は何か? ビジネスも同じだ。何が起こるかを予測し、会議の内容がまったく異なる方向に進む可能性があることに備える。自分が何も知らないことが起こるかもしれない。それにどう対処するか? スパイなどと取引する際には非常に困難が伴う。しかし、テーブルの向こう側に座っている「人間」と取引しているのだから、何が起きるかわからない。さまざまな想定をしておくべきだ。 嘘や欺瞞に長けている人がいるが、一般的な対策としては、相手から提供された情報をしっかり確認すること。その情報が自分の知っている事実と異なる場合、それについてしっかり考えるべきだ。 例えば、ある話題について話しをしたいとする。またテロを例にすると、彼がある特定のグループに問題が生じていると言っているとする。それが自分の理解と一致しない場合、何か少しずれている可能性がある。それは相手が欺いているという意味ではなく、単に理解が異なるだけかもしれない。したがって、人々と接する際には常に情報の再確認が必要だ。実際の現場は、スパイ映画とは違う。映画ではすべてがとても速く進むが、実際はそうはならない。度重なる確認作業を行う。そして、ほとんどの仕事は、骨の折れる作業、調査、理解、そして問題に対する深い理解が必要になる。 だから、映画の主人公である「ジョン・ウィック」のように会議に参加して、必要な答えが得られなければ誰かを撃つということはあり得ない。ジェームズ・ボンドも然り。諜報活動ではリポートにまとめることが重要な仕事であり、かなり多く文書を書いてまとめる。おそらく、どんな仕事よりも多く「書く」ことが必要になる。ジェームズ・ボンドがタイプライターを使っているのを見たことはないだろう。諜報機関における書く作業は、ジャーナリズムのようなものだが、CIAの作戦官は私が思いつく中で最も厳密に文書化を求められる職業だ。諜報員らはすべてを書き留める。すべてを、だ。そしてその内容にすべての責任を負う。その理由は、何が起こったのかの正確な記録を残したいからだ。後任者がその記録を読んで、何が起こったのかを理解し、次に進めるようにしたいからだ。なぜなら、多くの場合、同じ問題や同じ人物を複数の人が扱っているからだ。だから、そしてそれは絶対的な正直さを必要とする。

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