
2026年3月2日 〜 オシントUPDATE
アジア・太平洋情勢
パキスタン、アフガン・タリバンと「公開戦争」宣言 越境攻撃で緊張が急激に悪化
タリバン側が国境沿いのパキスタン軍拠点への攻勢を発表した後、パキスタンがアフガニスタン領内を空爆し、両国関係は一気にエスカレートした。双方が「相手が先に仕掛けた」と主張し、死傷者数も食い違っている(未検証)。昨年10月の脆弱な停戦が崩れる恐れがあり、各国から自制を求める声が出ている。
中国、全人代開幕前に軍高官9人を全人代代表から除名 規律・反腐敗の継続シグナル
中国の最高立法機関は、年次政治日程(両会)を前に、将官級を含む軍関係者9人を全国人民代表大会(全人代)から外した。公式には「法的・資格上の理由」とされるが、近年続く軍内部調査・粛正の流れと整合する。政府閣僚や委員ポストでも人事が動いており、統治規律の引き締めが続く可能性が高い。
中国、ロシア在住中国人に異例の注意喚起 長期滞在申請で「1年の兵役義務」法制化
在ウラジオストク中国総領事館が、ロシアの新法により、長期居住申請をする65歳未満の外国人男性に原則1年の兵役が求められると警告した。免除は既兵役や健康上の理由などが想定されるが、徴兵回避と合法滞在維持のため「慎重な判断」を促している。ロシアの兵員不足が背景にあり、中国側は対ウクライナ戦争への巻き込まれを避ける姿勢を強めている。
豪DroneShield、中国系ドローン嫌がらせ・監視懸念を追い風に急成長 ただしガバナンスが課題
中国関連のドローン監視・嫌がらせへの警戒が高まる中、豪州の対ドローン企業DroneShieldが、検知・ジャミングなど非致死的システム需要の拡大で売上を伸ばしている。欧州・米国への展開も加速する一方、経営統治をめぐる論争や幹部の株式売却が投資家心理を冷やし、改革を迫られた。短期需要は地政学と輸出規制が下支えするが、長期は契約透明性と納入確度が鍵になる。
北米・中南米情勢
キューバと米国、死者が出たボート衝突後に情報交換 生存者は拘束下で治療
キューバ軍とフロリダ登録の高速艇が衝突し死傷者が出た件で、ハバナは航海の組織性や容疑者情報について米側データ提供を要請、米側も調査を進めている。キューバは「武装した反政府勢力による“テロ目的の侵入”」と主張し、船はフロリダ・キーズで盗難だった可能性も報じられる。制裁や燃料不足など緊張が高い状況下で、偶発衝突が外交問題に発展するリスクがある。
ロシア大統領府、キューバ周辺の緊張激化に懸念 燃料不足で人道面を優先すべきと主張
クレムリンは、米国登録艇をめぐる致命的衝突を受け、キューバ周辺の緊張が高まっていると述べた。燃料不足が深刻化する中で「人道上の配慮」を優先し、状況を悪化させる行動を避けるよう牽制している。制裁・エネルギー問題と安全保障が絡み、域内の不安定化要因になり得る。
米上院、SBIR再承認で超党派合意 防衛イノベーションと対中リスク管理を両立へ
中小企業向け研究開発支援SBIRを5年延長する法案で、上院が超党派合意に到達した。外国影響(特に中国)への防御を強化しつつ、従来案にあった生涯上限(7500万ドル)は撤回し、年次の申請制限で運用する方向。制度空白が防衛案件の遅延を招いていたため、国防関連の調達と技術育成の安定化が焦点となる。
USMCAが年次レビュー化の恐れ カナダが投資萎縮を警告
カナダの貿易相は、7月の義務的見直し後、USMCA(米・メキシコ・カナダ協定)が毎年レビュー対象になり得ると警告した。恒常的な不確実性が投資を冷やし、鉄鋼・アルミ・自動車・木材など特定分野の打撃が続く可能性がある。カナダは対米依存を下げるため、非米国向け輸出拡大を急いでいる。
カナダ保守党党首、対米関係を中国で代替する動きに警鐘 対中排除の自動車協定など提案
カナダ保守党のポワリエーヴル党首は、中国は米国に代わる経済パートナーになり得ないとして、対中接近を批判した。中国車を除外する「無関税自動車協定」や、パイプライン計画の再始動、「Buy America」除外などを掲げ、対米安定を優先。USMCA見直しを控える中、対米交渉と対中スタンスの両立が国内政治課題になっている。
情報機関、議会への「ギャバード内部告発」関連インテリジェンス開示を拒否 特権を理由に対立
トランプ政権は、国家情報長官タルシ・ギャバードに関する内部告発を裏付ける未編集情報を議会に提供しない方針を示し、行政特権を理由に挙げた。NSAがまとめたとされる情報には、外国人同士の会話でトランプの娘婿・特使ジャレッド・クシュナーに触れた内容が含まれるという。監督権限を持つ議会との情報共有を絞る動きとして異例だとされ、政権と議会の緊張が強まっている。
親トランプ勢力、「選挙を緊急事態で掌握」案を流布 郵便投票制限など大統領権限拡大を狙う
親トランプ活動家が、中国による2020年介入疑惑を根拠に国家緊急事態を宣言し、大統領に投票制度への強い権限を与える草案を回覧していると報じられた。郵便投票の制限、手書き紙票の義務化、再登録と市民権証明、複数機関を動員した不適格有権者の特定などが盛り込まれる。違憲との批判が強く、連邦による選挙掌握をめぐる政治・司法対立に発展する可能性がある。
米軍、DHSのCBPドローンをレーザーで撃墜 当局間の連携不全が露呈しFAAが空域制限
国防総省がテキサスで「脅威に見えた」ドローンを高出力レーザーで撃墜したが、後に国土安全保障省(DHS)傘下の税関・国境警備局(CBP)の機体だったことが問題化した。軍側に飛行通知がなく、調整不足が焦点となり、FAAは周辺空域を制限。法的権限と安全管理、官庁間の運用統制が争点として浮上している。
米当局、中国の「ハニーポット」工作に警告 軍・防衛関係者を標的に誘惑型スパイ活動
米防諜当局は、性的関係などを利用して機微情報を引き出す「ハニーポット」工作が増えていると警告した。中国関係者と疑われる人物が、元兵士の防衛請負関係者や陸軍高官を狙い、性的示唆を含むメッセージを送った疑いがある。SNSや業界ネットワークを通じた接近が拡大しており、軍・学術・企業横断での対策強化が急務となっている。
中東・国際安保情勢
米、イラン・ロシア資金流入疑惑でスイス銀行遮断を提案 IRGC関連資金の「重要ノード」と認定
米財務省FinCENは、スイスのMBaer Merchant Bankがイランやロシア関係者のために1億ドル超を仲介したとして、米金融機関との取引禁止を提案した。IRGC関連やロシア犯罪ネットワークの資金流通の「要所」になったとされ、制裁逃れの金融回廊を断つ狙い。オマーン仲介の米イラン間接協議が続く中で、金融面の圧力を強めるシグナルにもなる。
衛星画像が示す「イランへの容易な勝利」主張の限界 施設強化と分散で決定打は困難
トランプ大統領は対イラン軍事勝利は「容易」と主張するが、衛星画像は核・ミサイル関連施設の再建・地下化・偽装が進んでいることを示すと報じられた。空爆だけでは専門知・物資・政治意思を消せず、ホルムズ海峡など地域リスクを高める可能性がある。攻撃評価(BDA)の難しさと、限定勝利がもたらす長期不安定化が焦点となる。
米軍優位でもイランの「残存脅威」は持続 ミサイル・対艦能力とプロキシで報復余地
イランは指導部・核施設などが標的になり得る一方、イスラエルや米軍基地、海上交通路を狙えるミサイル能力をなお保持する。最高指導者の「斬首」でも体制が即崩壊するとは限らず、権力が評議会や革命防衛隊へ移行する可能性がある。湾岸諸国は巻き込まれを警戒しており、抑止とエスカレーション管理が難題になる。
2025年の作戦事例が示す「新たな中東戦争」の運用リスク 迎撃・損耗・疲弊が課題
イエメンのフーシ派対応作戦の詳細から、F-16が地対空ミサイルを辛うじて回避した事例など、実戦上の危険が浮かび上がった。高テンポ作戦は部隊疲弊を招き、無人機損失や艦艇事故など安全上の綻びも出たという。イランとの持続戦になれば、人的損害、弾薬備蓄の逼迫、戦力運用の限界が一段と深刻化し得る。
欧州・ロシア・北極圏情勢
デンマーク首相、グリーンランド緊張を背景に前倒し総選挙 欧州防衛と結束を訴え
デンマークのフレデリクセン首相は3月24日の早期選挙を発表し、今後4年が欧州・デンマーク安全保障にとって「決定的」だと強調した。トランプ大統領によるグリーンランドをめぐる強硬発言が緊張要因となり、王国(グリーンランド・フェロー諸島含む)の一体性が政治争点化している。北極圏地政学の圧力下で、再軍備と対米調整が問われる。
欧州、ドローンの「備蓄」が難題 ソフト更新で数週間で陳腐化する戦場の現実
ウクライナ戦争でドローン戦が急速に進化する中、欧州各国は調達・備蓄の考え方を見直している。周波数やソフト更新、電子戦の進歩で機体が短期間で使えなくなるため、大量備蓄より柔軟調達と産業連携が重視される。対中依存低減と迅速量産のため、国内供給網と適応型契約が鍵になる。
独メルツ首相、初訪中で「経済と外交のバランス」模索 対米同盟を崩さず実利追求
メルツ首相は就任後初の中国訪問を終え、協力強化の可能性を強調しつつ、貿易不均衡や過剰生産などの懸念も提起した。航空・エネルギー・AIなどで多数の合意が結ばれたが、成果は象徴的との見方もある。対米関係を損なわない範囲で対中関与を進める「慎重な実利路線」が続く見通し。
伊レオナルド、航空構造材JVを2026年半ばまでに設立へ 防衛・民間の両市場拡大狙い
伊防衛大手レオナルドが、航空構造材分野で50:50の合弁会社を6月までに立ち上げる計画を示した。受注と売上の拡大を背景に、民間・軍用航空や将来の宇宙市場も視野に入れる。資本パートナーの候補としてサウジPIFの噂もあり、欧州防衛産業再編の一環として注目される。
英国、イスラエル系スパイウェア調達疑惑 「パレスチナ監視で開発・実験」技術との批判
調査報道は、英国政府や警察が、ガザや西岸での監視を通じて開発・実験されたとされるイスラエル関連企業の技術を購入していた可能性を指摘した。人権団体は、こうしたツールが差別的警察活動や抑圧に資する恐れがあると警告してきた。政府の対イスラエル批判姿勢と調達実務の齟齬が政治問題化する可能性がある。
宇宙・防衛テック情勢
宇宙軍、Vulcanロケットの国家安全保障打ち上げを一時停止 固体ブースター異常で調査
米宇宙軍は、2月12日のUSSF-87ミッションでVulcanの固体ロケットブースターに異常が見られたとして、追加打ち上げを停止した。衛星の投入自体は成功したが、過去の打ち上げでも類似兆候があったため、是正措置が完了するまで飛行再開しない。今後の国家安全保障打ち上げやGPS衛星計画に影響が出る可能性がある。
イスラエル、無人潜水艦「BlueWhale」をドイツ海軍に初納入 対潜・機雷・偵察の拡張センサーに
イスラエル航空宇宙産業(IAI)が、無人潜水艦「BlueWhale」をドイツ海軍へ初めて引き渡した。2〜3週間の連続運用能力と水上・水中センサーを備え、対潜戦、機雷探知、秘匿監視などに用いられる。独イスラエル防衛協力の深化を象徴し、有人艦のセンサー網を拡張する運用が想定される。
ルビオ国務長官、米露中の三国核軍備管理を提唱 トランプ・習会談前に「戦略的安定」を強調
ルビオ長官は、中国を含む三国枠組みの核軍備管理が世界安定に不可欠だとし、外交・経済的インセンティブも用いて参加を促す考えを示した。新START失効後の空白の中で、中国は協議参加に消極的とされる。首脳会談を控え、抑止の競争管理をどう制度化するかが焦点になる。
国際インテリジェンス戦略研究所(IGSI)